土がふかふかに!太陽熱養生処理による土づくりの方法

野菜づくりのコツ

野菜づくりの基本は”土づくり”と言いますが、どうしたら良い土ができるのかお悩みの方も多いのではないでしょうか?

そのカギとなるのが”団粒構造”太陽熱養生処理をすればあっという間に団粒構造が発達しますよ。

この記事では、太陽熱養生処理による土づくりのメリットや必要な資材、具体的な手順までわかりやすくご紹介します。ぜひ参考にしてみてください!

 



そもそも太陽熱養生処理とは?

太陽熱養生処理とは、太陽熱と有用微生物(納豆菌、乳酸菌、酵母菌など)の力を借りて畝を丸ごと発酵させる処理のことです。太陽熱養生処理を行うことで短期間で団粒構造が発達し、通気性が良く、水はけや水持ちも良い土づくりができます。

太陽熱養生処理のメリット

太陽熱養生処理のメリットを4つご紹介します。太陽熱養生処理と言えば「団粒構造の発達」がありますが、それ以外にも多くのメリットがありますよ!

それでは一つずつご紹介していきます。

団粒構造の発達で通気性や水はけ・水持ちの良い土になる

まずは良い土の条件を押さえておきましょう。以下は単粒構造と団粒構造の違いを示した図です。

 単粒構造と団粒構造の違い

https://www.takii.co.jp/tsk/saizensen_web/yuukisaibainosusume/vol02.html

土が左の単粒構造だと土壌粒子同士のすき間がほとんどなく、空気や水が通りにくい状態となってしまいます。一方で、右のように団粒構造であれば団粒同士に適度なすき間ができて空気や水を適度に通すとともに、団粒自体の中に水分を保持することができます。これが通気性が良く、水はけ水持ちも良いということです。この状態であれば、野菜たちは根をスッと伸ばしやすく必要なときに自由に水分や酸素、栄養分を得ることができるということです。

くま吉
くま吉

野菜たちにすくすく育ってもらうには、この団粒構造が理想なんだね!

このような団粒構造は通常、長い年月をかけて発達するものですが、これを短期間であっという間に発達させられるのが、太陽熱養生処理の最大のメリットです!

太陽熱養生処理では、有用微生物とともにそのエサとなる堆肥を入れます。有用微生物は堆肥に含まれる有機物を分解するとネバネバとした糊状の粘着物質を出します。これが土の粒子同士をくっつけて団粒構造が発達していきます。

 



有用微生物で病害虫を抑え込む

太陽熱養生処理の主役となるのが有用微生物たちです。エサとなる堆肥とともに有用微生物たちをまき適度な水分と温度を一定期間保つと、畝全体に有用微生物たちが勢力を拡大していき、悪い病害虫を抑え込んでくれます。それまで病害虫に悩まされていた畑でも、太陽熱養生処理をすれば安心して野菜づくりができますよ。

このとき、乳酸菌が出す乳酸には殺菌効果があるので、他の有用微生物たちが勢力を広げる手助けをしてくれます。

また、納豆菌や酵母菌は堆肥に含まれる有機物を分解すると、アミノ酸類などの栄養分を作り出してくれます。それを吸収した野菜たちは繊維の強化や旨味成分、糖分などに作り替えるので、品質向上にもつながりますよ!

栽培初期からミネラルをたっぷり吸収し病害虫に強い体に!

ミネラルは野菜たちにのびのびと健康に育ってもらうために欠かせません。例えば、マグネシウムは葉緑素の中核物質ですし、カルシウムは細胞同士をガッチリくっつけて強い体づくりに欠かせません。

このようにミネラルは野菜たちにとってに欠かせない肥料ですが、根から吸収してくれなくては意味がありません。ミネラルは鉱物なので溶け出すスピードが遅く、野菜たちに吸収してもらいにくい成分なのです。

そこで太陽熱養生処理を行えば、乳酸菌がキレートを作ってミネラルを可溶化してくれるので、野菜たちは培初期からミネラルをたっぷり吸収でき、病害虫に強い体づくりをしてくれます!

金太郎
金太郎

「キレート」はギリシャ語で「カニのはさみ」という意味。乳酸などの有機酸がミネラルをカニのはさみのように包み込み、植物に吸収されやすい形に変えてくれる。

高温で畝全体を一気に除草

高温で焼け死んだ雑草の芽

猛暑日になれば透明ビニールマルチ下の土の表面温度は60℃以上になります。これを利用すると雑草の芽はもちろん、表面にある雑草の種も焼き死んでしまいます

夏場は雑草の勢いが凄く気を抜いているとあっという間に手が付けられなくなってしまうので、その前に太陽熱養生処理で一気に除草してしまいましょう!

 



太陽熱養生処理に最適な時期と必要な養生期間

太陽熱養生処理はいつ、どのくらいの期間行えば良いのでしょうか?

太陽熱養生処理は、地温の積算温度が300〜900℃必要だと言われております。夏であれば2週間ほどで十分ですし、地温がそこまで上がらない春や秋であれば1ヶ月以上必要でしょう。

おすすめは、やはり夏です!太陽光が非常に強い季節ですし、透明ビニールマルチを使えば相乗効果で40℃以上の地温を確保でき、あっという間に太陽熱養生処理の効果を十分に得られます。夏以外の季節でも時間をかければ行えますので、余裕を持って計画してみてください!

金太郎
金太郎

積算温度とは、その日の最高地温を足し合わせていった温度のこと。最高地温40℃の日が14日続けば40℃×14=560℃ということだね。

 



太陽熱養生処理に必要な資材

太陽熱養生処理には以下の資材が必要ですので、準備しておきましょう!

太陽熱養生処理に必要な資材
  • 牛ふん堆肥 4kg/㎡
  • 次作の元肥
  • 透明ビニールマルチ
  • 発酵液の材料(作りやすい分量)
    • 納豆 1パック
    • ヨーグルト 1パック
    • ドライイースト 30g
    • 黒砂糖 150g
    • ポリバケツ(45リットル程度)
    • 水 30リットル程度

有用微生物が増殖するためには「エサ」が必要です。そのエサにはC/N比が15~25と微生物が分解しやすい牛ふん堆肥が最適ですよ!また、太陽熱養生処理後に育てる野菜の元肥も一緒にすき込むので用意します。

ビニールマルチは透明のものを準備してください。透明マルチは光を土の中まで通し地温が上がりやすいため、太陽熱を効果的に利用することができます

また、太陽熱養生処理の主役となる有用微生物を培養した「発酵液」も準備します。ここでは「納豆菌」「乳酸菌」「酵母菌」を培養させるため、それぞれの菌のタネとなる資材を揃えます。あわせて、微生物のエサとなる黒砂糖も忘れずに!

発酵液の作り方は以下で具体的に説明します!

有用微生物を培養した発酵液の作り方

有用微生物のタネ

有用微生物である「納豆菌」「乳酸菌」「酵母菌」を培養した発酵液を作ります。発酵液を作るには一晩かかりますので、太陽熱養生処理をする前日には仕込んでおきましょう!

発酵液の具体的な作り方は以下のとおりです。

発酵液の作り方
  • STEP①
    ポリバケツに必要な資材を入れる

    ポリバケツ(45リットル)に30リットル程度の水を入れ、納豆やヨーグルト、ドライイースト、黒砂糖を投入します。

    水道水に入っている塩素は微生物の培養の妨げになってしまうので、井戸水やミネラルウォーターなどを使用しましょう!どうしても水道水しか使えない場合は、カルキ抜きをしてください。

  • STEP②
    水温を約30℃に保つ

    微生物は水温30℃前後の”ぬるま湯”を好みます。夏場であれば勝手に適温に上がっているかもしれませんが、春や秋だと30℃に届かないでしょう。そのような場合は、水槽用ヒーターを使うと良いですよ!おすすめは以下のものです。

  • STEP③
    一晩置いたら完成!
    完成した発酵液

    水温30℃前後で一晩置くと、あっという間に有用微生物たちが増殖してくれます!匂いを嗅ぐと、ほんのりヨーグルトの香りに少し酸っぱい匂いがすると思います。水温が低い場合は、2~3日置いておくと良いでしょう。

完成した発酵液は100倍ほどに希釈して使用してください。例えば、8リットルのジョウロであればコップ半杯分(80ml)ほどの発酵液(原液)を入れます。

 



太陽熱養生処理の具体的なやり方

太陽熱養生処理の具体的な手順は以下のとおりです。

それでは具体的にご紹介していきます!

準備した資材を土に鋤きこむ

牛ふん堆肥と元肥をまいた畑

まず牛ふん堆肥と次作の元肥を畑にまき、耕運機などで良くすき込むようにしてください。

牛ふん堆肥は有用微生物が増殖するためのエサとなる資材です。畝全体で増殖してもらうためには、すき込んだあとに牛ふん堆肥が畝全体にまんべんなく散りばめられているのが理想的なイメージです。雨が降って水分が多く含まれている状態だと耕運機ですき込んでも固まりが残ってしまったりするので、晴れが続いて乾燥気味の土が良いですよ!

希釈した発酵液を畝にたっぷりまく

希釈した発酵液をたっぷりまいた畝

牛ふん堆肥と元肥をすき込んだら次作で必要な畝を立て、畝に希釈した発酵液を撒きます完成した発酵液は100倍程度に薄めて使ってください。8リットルのジョウロであれば、コップ半杯分(80ml)ほどの発酵液をまぜてあげればちょうど良いです。

希釈した発酵液は畝にたっぷり撒いてください。太陽熱養生処理に必要な土壌水分は50~60%と言われています。これは、水やり直後に畝のくぼみで小さな水たまりが出来るくらいだと覚えておいてください!

金太郎
金太郎

希釈する水には水道水を使わないようにするのは、発酵液を作る際と同じなので注意しよう!

透明ビニールマルチで畝を密閉する

透明ビニールマルチで密封した畝

最後に畝全体に透明ビニールマルチをかけます。有用微生物たちに増殖してもらうには地温を上げる必要がありますが、このときビニールマルチの裾が空いているとせっかく温めた空気が外に逃げてしまいます。これでは地温が上がりにくくなってしまいますので、ビニールマルチの裾はしっかり埋め込むようにしてください。

これで仕込みは完了です!夏であれば2週間ほど春や秋であれば1か月ほどが必要な養生期間となります。あとは暖かく見守っておきましょう~。

 



2週間~1か月ほどで太陽熱養生処理が完了!

団粒構造の発達した土

養生期間が終了したら、出来を確かめてみましょう!軽く握ると土の塊が出来て、指で軽く押すと…

団粒構造の発達した土

ほろっと崩れました!これが団粒構造の発達した良い土の証拠です。ぜひ、実際に土を触って確かめてみてください。まだ団粒構造が発達していないな、と感じたら、透明ビニールマルチを元に戻してもう少し養生期間をとってみましょう。

まとめ

ここまで、太陽熱養生処理による土づくりの方法をご紹介しました。

太陽熱養生処理による土づくりで大切なこと

野菜たちにすくすく育ってもらうには「団粒構造」を発達させることが重要

「太陽熱養生処理」なら団粒構造を一気に発達させられる他、メリット多数!

太陽熱養生処理の効果を最大限に得られるのは”夏”!

十分な積算温度を確保して、有用微生物たちを一気に増殖させる

「美味しい野菜をたくさん収穫するには何が大切?」と聞かれたら、野菜づくりの達人でも「土づくり」と答えるでしょう。それほど野菜たちにとって”土”は大切ですが、太陽熱養生処理で土づくりをすれば短期間であっという間に良い土が出来て、それが良い野菜づくりに必ず結びつきます

ぜひ、太陽熱養生処理を試してみてください!

 



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