ナスの有機栽培・育て方

実もの

夏野菜の代表選手といえば、ナスですね!

炒め物や煮物、漬物はもちろんですが、何といっても油との相性が抜群!天ぷらや煮びたしにしてビールを片手にしたら、もう優勝です(笑)。イタリア系のナスはオリーブオイルやトマトソースとの相性も良いので、カポナータやパスタソース等にしても良いですよね。

今回は、そんな夏に欠かせない「ナス」の有機栽培・育て方をご紹介します。

品種選び

まずは品種選びです。日本におけるナス栽培の歴史は古く、奈良時代にはすでに伝わっていたとされています。地方品種も数多くありますし、世界でみるとさらに多くの品種があります。

ナスには大きく分けて3つのタイプがあります。金太郎の好みに若干偏っていますが、タイプ別のおすすめ品種をご紹介します!

長卵形品種

スーパーや青果店で見かける、最も一般的なタイプのナスです。代表品種は「千両二号」で、ホームセンターでは必ずと言っていいほど置いてあるでしょう。トゲがない「とげなし千両二号」もあります。

長ナス品種

長細い形のナスで、タキイ種苗の「筑陽」や「黒陽」あたりが代表品種です。その他、中国生まれの「マー坊」(サカタのタネ)や「炒めて台湾」(トキタ種苗)も。

丸~米ナス

丸い形のナスで、タキイ種苗の「早生大丸」や「くろわし」などが代表品種です。その他、「グリルでイタリア」(トキタ種苗)やイタリア・トスカーナ地方の伝統品種である「フィレンツェ」等のイタリア系の丸ナスもあります。

その他品種

上記品種の他、水ナスや大長ナス、地方の伝統品種など多種多様な品種があります!純白なナスである「とろーり旨なす(揚げてトルコ)」という品種もありますよ。

栽培のポイント

ナスは「実ものタイプ」の野菜に分類されます。以下で詳しく説明しているので、まずはこちらをご覧ください!

実ものタイプの有機栽培・育て方のコツ
実ものタイプは「栄養成長と生殖成長が並行」「栽培期間が長い」が特徴です。これらを踏まえた土づくりや施肥管理を押さえておきましょう!実ものタイプの特徴栄養成長と生殖成長が並行生育初期は一般的な野菜と同様に、栄養成長でRead more...

その上で、実ものタイプの中でも特に”ナス”栽培でのポイントを以下のとおり補足します。

水はたっぷりと!

ナスは高温多湿を好み、水の要求量も非常に多いです。ゆえに畝間に水を流し込んだり、常に湿った状態にして栽培されています。一方で、酸欠にも弱いです。水をあげ過ぎて土が過湿になると、酸素が不足しアオガレ病や根腐れを引き起こします。

ですので、畝は”高め”にして空気の保持を最大限にしつつ、畝間に”水をためる”くらいの管理をしておき、常にナスにとって最適な環境を保てるように日々観察しましょう!

団粒構造を特に意識した土づくりを

「実ものタイプ」は栽培期間が長いことから、それに耐えうる土づくりの必要性を上記のページで説明したところです。先述のとおり、同タイプの中でもナスは水を好みつつ酸欠には弱い野菜であることから、水持ちと通気性を確保しておくことが重要です。

ですので、団粒構造の発達とその維持は他の野菜と比べて特に意識する必要があります。C/N比の高い(20~25)堆肥を用いて、太陽熱養生処理をしておきましょう!

菌のバランスを整える

たっぷりと水やりをしていると、嫌気的な環境になりやすいです。土が腐敗の方向に行かないよう、酵母菌や乳酸菌たちに上手く働いてもらい、土壌病害抑制型の土壌にしておく必要がありますあらかじめそれらの菌の培養液を作っておき、水やりの際に混ぜると良いですよ。

また、アミノ酸肥料も酵母菌や乳酸菌が入っているものを選ぶのも良いですね。もちろん、自分で作っても良いですよ!

カリを少し多めに

カリは水を運ぶ性質を持っています。たっぷりとあげた水分が円滑に実に届くと、すんなりと伸びて収量と品質が上がります。上限値の20~30%増しを目安に施用しましょう。

種まき&苗づくり

ナスは5月上旬のゴールデンウイーク前後に苗を植え付けることを目指します。

苗から栽培する場合はその頃にホームセンターやネット通販を見ると、様々な品種が出回っているので、そこで購入しましょう。

種から栽培する場合は、2月中~下旬ごろに種まきをします。種まき・育苗の際は”育苗器”を活用しましょう!というのは、発芽の適温は25~30℃であるのに対し、この時期はそれを下回る寒さだからです。せっかく種から栽培するからには、確実に発芽・育苗させたいですもんね。

以下、種から栽培する場合をご紹介します。

種まき(2月中~下旬ごろ)

まず、200穴のセルトレイを用意し、育苗器に入る大きさに加工した上で、1穴に1粒ずつ蒔いていきます。

種を蒔いたら育苗器に入れます。前述のとおり、地温は25~30℃を保つように設定します。小型の地温計を複数個所に挿しておくと確認しやすいですよ。

日当たりのいい場所に置き、霧吹きで定期的に土を湿らせておくように気を付けましょう。

種まきから1週間後の様子

種まきから1週間ほどで発芽しました!お前、なんでそんなに可愛いんだ…。その種の殻、取れないなら取ってあげようか…?いや、甘やかすのは良くないな…。

育苗器にかけると地温が上がるため、土がとても乾きやすいです。引き続き注意深く水やりをしましょう。

育苗器にかけると地温が上がるため、土がとても乾きやすいです。引き続き注意深く水やりをしましょう。

種まきから3週間後の様子

種まきから3週間ほどで本葉が2枚ほど。よく大きくなってくれた!ここで鉢上げをします。

鉢上げ完了!植え替え後は育苗器に入れることができないので、予め育苗マットを用意しておきましょう。

オレンジ色のマットが「育苗マット」、その下は「断熱材」

この育苗マットの上に苗を置いてさらに育苗します。育苗マットは20~30℃程度の保温ができれば何でも構いません。

4月に入ると日中は30℃を超す日も出てきます。高温の日は昼間の電源を落としておきましょう。このような細かい調整が難しい場合は、サーモスタット機能があるものを選ぶと自動でON・OFFを切り替えてくれますよ。

種まきから2か月半後の様子(苗から栽培の場合はここから)

種まきから2か月半でこんな感じ。やっとホームセンターで販売されているような苗になってくれました!本葉が6~7枚で、生長点に花蕾が見えてきたら、植え付け適期です!

ホームセンター等で選ぶ際は、上記の他に「節間が詰まっていて葉色が濃い」ものを基準にするといいと思いますよ!

土づくり

苗づくりと平行して土づくりを行いましょう。

畝幅は65cmとし、以下の肥料を鋤きこんでおきます。その畝に、幅95cmの黒マルチを張ります。

  • 堆肥2kg/㎡(C/N比が高いもの)
  • 卵殻200g/㎡
  • 有機発酵肥料250g/㎡
  • ミネラル類70g/㎡

ナスは栽培期間が非常に長いです。その間に水分や養分をしっかりと蓄えておけるような土づくりが必要です。そのためには、C/N比の高い堆肥を施用して、予め太陽熱養生処理を行っておくといいでしょう。

植え付け

ゴールデンウイークがやってくる頃に、いよいよ植え付けです!

先述の苗づくりが完了、もしくはホームセンター等で苗を購入したら、45cm間隔に1列で植えていきます。この時、植え付けるために掘った穴に、一度水をたっぷりとあげましょう。水が引いたら、苗を植えて株元を軽く押さえてあげます。

植えたばかりの苗はまだ赤ん坊です。雨風に弱く、ちょっとしたことで折れてしまう可能性があります。苗から10cmほど横に支柱を立てて、誘引することで苗をしっかりと支えてあげましょう。この時、「茎に優しく、支柱に厳しく」が鉄則ですよ!

整枝・支柱の追加

3本仕立ての場合

1番花より下2つのわき芽を残し、それ以外を取り除いた様子

株数が少なく、マメに手入れできる場合は「3本仕立て」がオススメです!

3本というのは、主枝と1番花のすぐ下2つのわき芽のことです。主枝はまっすぐ垂直に、わき芽2つにはクロスするように支柱を差して誘引します。

それぞれの枝に支柱を立てて誘引できるので、実が成っても枝が折れにくいですし、近年多発する台風やゲリラ豪雨等の自然災害にも強いです。また、V字(2本)仕立てより収量が上がります。

V字(2本)仕立ての場合

株数が多く、マメな手入れが行き届かない場合は「V字(2本)仕立て」がオススメです!

2本というのは、主枝と1番花のすぐ下1つのわき芽のことです。3本仕立てから垂直の支柱を1本抜いたような形で支柱を差します。この様子が”V”の字に似ていることから、このような名前が付いています。

その後は成長の段階に合わせて横に紐を張ります。こうすることで、実が成っても紐が支えてくれますし、マメに手入れをしなくても管理ができます。3本仕立てと比較すると収量は落ちますが、それでもある程度の収量は確保できます。

一番果とり

一番果(最初につく実)が成りました!もう少し大きく成長させてから収穫したいところですが、そうはいきませんよ!心を鬼にして、小さいうちに取ってしまいましょう。

まだ栽培初期で株は小さいです。今後、たくさんの実をつけてもらうべく、まずは”木づくり”に注力してもらいます。

収穫!

6月中旬ごろより、いよいよ収穫です!

お前はなんて美しいんだ…。収穫したてのナスは皮に艶とハリがあります。スーパーに並んでいるものはたいてい収穫から2~3日は経っているものです。家庭菜園ならではの良さを楽しみましょう!

追肥・水管理

初収穫を終えてから、2~3週間おきに追肥を始めます。

ナスは水を好む野菜です。実が硬くなってきたと感じたら、カリを追肥しましょう。実がすんなりと伸び、収量も上がります。

微量要素の不足にも注意しましょう。特に多いのがマンガン、鉄、ホウ素の不足です。以下の追肥を基本としつつ、それぞれの欠乏症が出始めたら、早い段階で対応するように気を付けましょう。

  • 有機発酵肥料50g/㎡
  • ミネラル類20g/㎡

また、畝間は水をためるくらいにして管理します。これと併せて重要なのが、微生物層の管理です。水をたっぷりとあげると、嫌気的な環境になりやすく、施用した有機物や水を腐らせてしまいます。

追肥と同様、定期的に酵母菌や乳酸菌をまき、微生物層を整えましょう。

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